卒業生の声

官公庁(行政)

卒業生の写真

長谷川 学さん
林野庁(平成22(2010)年修了)

私は昔から山が好きであちこち登っていましたが、森林科学専攻に足を踏み入れたきっかけは、実は教養学部で受けた景観の授業に感銘を受けたことでした。大学院では森林風致計画学研究室にて、森林のみならず都市空間まで含め景観、観光、公園、自然保護など人と自然の関わりについて幅広く学んできましたが、林野庁職員となった現在はその経験が大いに活かされていると思います。

森林とひとことで言っても、森林資源管理、治山治水、生態系保全、木材・住宅産業、バイオマスエネルギー、自然公園、グリーンツーリズム、まちづくりなど、また国外では適切な森林管理や地球環境問題解決のための国際的スキームに至るまで、社会の本当に様々な場面で関わっています。斜陽産業と言われていた日本の林業も、いまや成長産業のひとつとして注目され、持続可能な地域社会を形成する上でも重要な位置づけとなっています。もちろん課題も多くありますが、これからの可能性に満ちている分野です。

森が好き、街が好き、旅が好きな私としては大変面白い、やりがいのある仕事と感じています。森を歩き、ふと気づいた小さな事柄が社会を変えていくヒントとなるような、そんな森林科学の分野で皆さんも可能性を広げてみませんか。

卒業生の写真

渡邊 大地さん
山梨県庁(平成24(2012)年卒業)

元々生物系の学問に興味があって理科Ⅱ類に入ったはいいものの、特定の分野に強い興味がなく、進路を悩んでいたときにたまたま目に入ったのが、この森林科学の分野でした。この道に入った当初は、漠然と森林の動植物について学んでみたいという思いがありましたが、森林科学を学び、演習林で先人が森林という日々成長する資源をどうやって見定めてきたのかを追体験する中で、人が森林をどのように管理経営してきたかに興味を持つようになりました。

今、私は山梨県の林業技術職員として働いています。山梨県は独自の歴史を持った県有林があり、ある意味で一森林所有者ですので、森林科学で学んだ全てを活かす道がある、森林科学を学んだ者にとっては魅力的な職場です。この職に就いてから、寧ろ学生の頃より森林科学に対する興味は増しており、現場でも、机の上でも森林と格闘しながら毎日を過ごしています。

森林科学には、今山に対する思いがそれほどなくても、入ってから、自分でも思いもよらなかった視点から山を好きに思わせてくれる懐の深さがあります。進路に悩む学生の皆さんも、少しでも山のことに興味があれば、思い切ってこの道に飛び込んでみてください。

官公庁(研究)

卒業生の写真

小松 雅史さん
森林総合研究所(平成20(2008)年修了)

学生時代、私はマツ材線虫病という線虫によって引き起こされるマツの病気について研究を行っていました。日本中のアカマツやクロマツを枯らしてしまう大変な病気ですが、乾燥などのストレスに強いとされているマツが、線虫に感染すると3、4週間で見事に枯れてしまうことに(不謹慎ながら)魅せられたのが研究を始めたきっかけです。ただ単に一つの病気を扱うにしても様々な切り口があります。私は線虫を感染させたマツの苗木を材料として、光合成を測ったり、マツの糖分を測定したり、傷害をうけたマツの細胞から出る電解質や傷害で影響を受けた樹液の表面張力を測ってみたり、線虫の入ったマツをスライスして細胞や線虫を顕微鏡観察したり、またマツ材線虫病が流行している森林で生態調査を行い、線虫とその運びやのカミキリの遺伝的な空間分布を調べてみたり、とずいぶんいろいろな事を経験させていただきました。その多くが形になったのかというと、?な部分もありますが、卒業後に樹木の光合成やオゾン吸収などのプロジェクトに関わることがあり、当時の経験がそのとき活かされたと思います。

現在では、森林総合研究所というところで、野生きのこや樹木の放射性セシウム汚染について調査を行い、種による違いや生態中の放射性セシウムの動態、低減のための対策などの研究に携わっています。森林は私のようななんとなく来た人間も優しく受け止めてくれる非常に懐の深い分野だと思います。興味を持たれた方は、是非幅広い研究から好きな事を見つけて取り組んでみてください。

卒業生の写真

石塚 航さん
北海道立総合研究機構(平成24(2012)年修了)

「自然環境のことを深く学びたい」という思いと、「研究者」への憧れから、理科II類より森林科学の門戸を叩きました。最初の実習で採集した葉を標本にしながら、樹木にはなんてたくさんの種類があるんだと驚いたことが記憶に残っています(恥ずかしながら、そもそも樹木の名前なんて今まで気にしたことがなかった)。そんな無知ながら、充実したいくつもの実習を通じて、天然林での樹木の生き様に強く惹かれるようになり、卒論・修論・博論と演習林でのフィールド研究に没頭していきました。悠久の時間の中でのダイナミックな動態を垣間見れたこと、そして、先人のつくった試験地を再訪して実証していく、まるで眠れる宝に光を当てるような試みができたことは、森林分野ならではの充実した体験でした。

博士課程修了後は、駒場キャンパスへ移り、ポスドクとして遺伝生態学と作物育種学を学ばせてもらいました。その後、原点回帰、道総研・林業試験場の研究員に就職し、林木育種分野に携わっています。育種による品種改良等で優れた苗木をつくることは、生産性と健全性の高い森林づくりへと直結します。僕たちの研究成果がこれからの林業を支えると信じて研究に没頭しています。

学生時代にたっぷりと時間を使い、肌で感じ、体験したことは今も自分の糧となっていることを実感しています。学生みなさん、試行錯誤しながらも、興味あることに全力で打ち込んでください。

林業・林産

卒業生の写真

高橋 創 さん
日本製紙(平成19(2007)年修了)

ただ漠然と環境問題に興味があるからという理由で進学した森林科学専攻ですが、素晴らしい体験をする事ができました。

森林科学専攻では、日本各地に点在する大自然に囲まれた演習林を調査フィールドとし、スケールの大きな研究をすることができます。学部3年時の演習林実習ではクラス全員で東京から離れた演習林に遠征し、野山を1日中駆け回り実習を行います。疲れ果てて戻ってきた後の晩ごはんとお酒の味は格別なものでした。また、クラスメートと同じ釜の飯を食べ、苦楽を(ほとんど楽しい思い出ばかりですが)共にできたことは、今でも素晴らしい思い出として私の中に残っています。

現在、私は製紙メーカーで働いています。大学時代に学んだ森林科学の知識を生かし、紙の原料である樹木の生育や施業に関する研究をしています。大学時代の知識が生かせる仕事に就けたことはとても幸せであると感じ、森林科学で私を育ててくださった先生方への感謝の気持ちと共に、日々仕事に励んでおります。

進振りは人生の大きな岐路となります。学生の皆さんが、自分に悔いの残らないような選択ができるよう願っております。

卒業生の写真

星野 真有美さん
日本製紙(平成21(2009)年修了)

私は2007年に別の学部を卒業してから、農学生命科学研究科の森林科学専攻を受験し林政学研究室で修士課程の2年間を過ごさせて頂きました。学部生時の研究室は化学系の研究室だったため、同じ実験であれば必ず同じ結果が出る再現性が基本であり、化学の緻密さ・面白さを存分に学ぶことができました。そんな全く畑違いの私が森林科学専攻に進学を決めたのは、木が成長するということ自体に古来変化はないにも関わらず、森林を取り巻く状況は常に人間側の事情で大きく変化してきたということに問題意識と興味を持ったことがきっかけでした。

修士課程で私の研究対象は林業事業体や行政などの「人間」に変わり、社会科学的なアプローチでは研究者によって全く異なる視点・切り口で様々な事実を浮き彫りにし、問題提起できるという点に非常に大きな魅力を感じるようになりました。大学院から進学した私ですが、森林科学専攻の多彩な授業や充実したフィールド実習を経て沢山の経験を積むことができ、また研究室の皆さんのフォローのおかげで大変充実した研究生活を送ることができました。また、「森林」をキーワードに集まったメンバーは非常に熱い方が多く、公私共に続く強いつながりを築くことができたことも私の財産です。就職した今でも、各方面での仲間たちの活躍が私の励みになっています。

学部からの進学だけでなく、大学院からの進学を検討されている方も是非勇気をもって飛び込んで頂ければと思います!

卒業生の写真

飯塚(大塚) 潤子さん
東京チェンソーズ(平成20(2008)年卒業)

私が森林科学専修に進学したのは、もともと中高の頃から砂漠化や熱帯雨林の破壊といった環境問題に関心があったということ、その上で、教養学部時代に受けた授業の中で、「国内の森林が十分育っているが適切な間伐ができていない」といった趣旨のことを初めて知り、国内の森林問題に関心がシフトしたことがきっかけです。当時は環境への意識が高い人でも、「木を伐ることはよくないことだ」というような考えの人が多かった印象があります。卒論ではそういった自身の経験から、一般の人が森林について知り、森林にプラスとなる行動を取るにはどういったプロセスが必要かといった、思いっきり社会学の内容に取り組みました。理系の学部において、このように自分が関心をもった事象について自由に研究させてくださった先生方には大変感謝しています。

林学時代は本当に楽しい思い出ばかりでした。夏の北海道実習ではクラスメイトの自家用車に相乗りして一泊二日かけて富良野へ到着、途中で貴重な電車を逃した別のクラスメイトを拾ってあげたり…植物学実習では豪雨による落石発生のため、昼からみんなで食堂に集まり酒を飲んで過ごしたことや、原付で田無演習林まで通っていたら途中白バイに捕まったことも忘れられません。また、千葉の演習林ではヒルに対抗する技という、非常に実践的なことを学ぶことができました。本当に楽しいです。林学、オススメです。

今の私の職場は東京都檜原村にある林業事業体で、補助金を使った民有林での造林・育林作業や、社有林での素材生産、森林に関わるイベントの企画運営などです。大学を卒業後、国際見本市主催会社で4年の経験を経て林野庁の外郭団体にて1年間の契約社員、それから念願の今の会社に移りました。転職の際にもOBの皆様、研究室の仲間にはずいぶん相談させてもらいました。大学時代が不真面目な学生でしたので、大学での学問が今の仕事で直接役に立っているかというとやや疑問ですが、大学時代になにか一つでも一生懸命取り組んだこと(私でいうと卒論)は、間違いなくのちの人生の財産となっています。

製造

卒業生の写真

大崎 学さん
宝酒造株式会社(平成18(2006)年卒業)

幼少時代から実家の裏山を駆け回り、時には山菜採りやキノコ狩りを楽しんでいた私にとって、森林科学は自然と惹かれる学問であり進学を決めました。

学部時代を振り返り、真っ先に思い出されるのは、広大なフィールドで行われた実習の数々です。千葉・秩父・北海道など全国各地にある演習林で、広大な自然に生きる動植物を目の当たりにし、非常に感動を覚えました。そして実習の夜には、広大な自然に囲まれて飲むお酒の奥深い味に、感動を覚えたように思います(笑)。

研究室は森林植物学研究室に所属し、大学院修士課程まで進みました。卒業論文、修士論文ともいわゆるキノコについてのテーマを選び、森林における菌の果たす役割の重要性について学ぶことが出来ました。

そして現在、私は酒造メーカーの研究部門で働いていますが、お酒の原料となる穀物や、お酒を造るのに欠かせない麹菌や酵母といった微生物に関する研究業務を進めていると、森林科学の研究対象である樹木やキノコについての知識が活きる場面が意外にもあることに気付きます。そんな時、学生時代にもっと真面目に勉強しておけば良かったという思いに駆られたりする一方で、森林科学で学んだことが仕事の中にも活かされているということを実感します。

卒業生の写真

小松 隆平さん
森永乳業(平成24(2012)年修了)

森林科学の魅力といえば、何よりもその懐の深さにあると言えるでしょう。生物学や機械工学、文献調査から景観の解析まで、あらゆる角度で森林という巨大な対象に切り込んでいく多彩な授業。興味に合わせた選択ができる自由度の高いカリキュラム。同期や先輩・先生方と野外で汗を流し、酒を酌み交わす演習林での野外実習。一貫して、接する学問分野の広さ、接する人の多さとその深さを大事にする考え方に支えられた森林科学での生活は、ともすれば研究対象に意識が集中しがちな専門課程においても、視野を広く持つことの大切さを教えてくれました。

私は森林科学を修了後、大学での専門分野と関係の無い進路を選択しました。一般的には、社会に出た後に大学での学びを生かすことができる機会は少ないと思いますが、ここでもさすが森林科学の懐の深さというべきか、今でも休日に山登りをしたり、きのこ狩りをしたりと、私は森の魅力を存分に味わうことができています。もちろん、自然に触れるのは誰にでもできることですが、森林科学での生活を経て森との距離が縮まったからこそ今日の生活があるのは言うまでもありません。

日本の国土の2/3は森林に占められているのですから、森林をただの風景として見てしまうのではあまりに勿体無い。森林科学で勉強して、色々な側面から森林について知ることで、学生生活だけでなく、その後の人生も豊かなものになることと思います。

商社・金融

卒業生の写真

小倉 和志さん
伊藤忠商事(平成8(1996)年卒業)

学生時分、研究室の飲み会には積極的に参加するも卒論は遅れに遅れ、先生にはかなりご迷惑を掛けました。現在、総合商社に勤務し世界に伍して仕事をすると同時に、日々の客先訪問、デスクワークに奮闘する毎日。

世界的な視野と同時に現場主義が求められる。地球規模の環境問題を考える一方、フィールドワーク重視の森林科学専攻での経験が活きています。大学で木材貿易の講義を受けた際、異国の地で木材を買付ける自分の姿が思い浮かび、天職はこれだ!と思い込み商社を志望しました。現在、北米の住宅資材事業やブラジルの紙パルプ事業の戦略策定に携っており、森林資源を活かし人々の豊かな住生活に関わっているかと考えるとForester冥利に尽きます。

卒業させてくれた恩師を思うと本郷に足を向けては寝られない毎日ですが、社会に揉まれて自分も少しは成長したかなぁ、なんて。おっと、いけない。そんな悠長なことも言ってられない。明日もバリバリ働きまっせ。

卒業生の写真

宇部 真広さん
商工組合中央金庫(平成25(2013)年卒業)

文科三類に入ってみたものの、文系の専門科目にはあまり興味が湧かない。だったら思い切って理科系の分野に飛び込もう。そういえば自分、森だとか自然が好きだったな。そんな(やや短絡的な)考えから森林科学への進学を決めました。理科系の分野と言ったものの、林学は文理の垣根が低い、総合学習的な要素が強い学問であったと思います。生物学的要素はもちろん、工学的要素、社会学的要素、経済学的要素etc…。私は造林学研究室で、熱帯の樹木に関する研究を専攻しました。

一番思い出深いのは、演習林での実習。自分の足でデータを集め、分析したうえで一つの結果をアウトプットする作業からは、とてつもない達成感を味わえます。また卒業研究・卒論作成にあたっては、指導教員のもと論理構築の訓練を重ね、研究者としての論理の組立て方を学びました。今の仕事でも、顧客交渉等でこの力を発揮できていればいいなあと思います。

現在は中小企業向けの金融業務に携わっています。残念ながら、林学の知識が直接に仕事で活かされたことは今のところありませんが、いつかは森林に関わる産業の成長を、金融面で後押ししたいですね。

情報通信

卒業生の写真

金道 知聖さん
NHK(平成31(2019)年修了)

私が森林生物科学専修を選んだのは、もともと森や自然が好きで生き物に興味があった上、1年生で参加したフィールドワークが楽しかったからでした。専攻に入ってからも、泊まりがけのフィールドワークで、野草の味見をしながら(?)植物採取をして回ったり、夜宿舎で同期や先生方と飲み明かしたのはよい思い出です。

学生の頃、先生に「(演習林の管理費も考えたら)森林科学の学生は医学部生と同じくらいお金使ってるんだよ~」などと冗談交じりに言われたりしましたが、ここまで広大なフィールドで、ここまで先生や技術職員さんのお力を借りながら研究できる環境は、日本中探してもないと思います。私の場合、演習林に所属していたこともあり、触れ合う先生方、技術職員さんも特に多かったかもしれません。研究対象だった竹を植えるため、30 m四方の苗畑(木を植える畑のような場所)を2カ所も占有させてもらったり、その世話や掘り出し調査で何人もの技術職員さんのお手を借りたり…本当にお世話になりました。

今私はテレビ局で番組作りをしていますが、感じるのは、森林科学で学んだことが、当時思っていた以上に私たちの社会と密接に関係していること。地方の過疎を考える時、災害の取材、気候変動を扱う時…やばい!もっとちゃんと授業聞いとけばよかった!と何度後悔したかわかりません。私は生物がやりたくて森林科学を専攻しましたが、それをきちんと学びながら、かつ幅広い学問に触れられるのも、この専攻の魅力だと思います。
あと、森林という長いスパンのものを研究対象にしているからか、大らかで優しい先生が多い気がします(笑)

少しでも興味があるという方がいたら是非、直接森林科学の先生に相談してみてください。きっと親身に考えてくれるはずです。そしてもし、この世界に入ってきてもらえたら、一人のOGとして嬉しく思います。

コンサルタント

卒業生の写真

佐々木 聡子さん
SGSジャパン 森林認証プロジェクトチーム(平成13(2001)年修了)

広大な演習林に惹かれて森林科学科を選択し、期待通り、演習林での実習では思う存分森林を満喫できました。もともと自然や森林が好きでしたが、樹木、動物、土、水、そして人間など森林に関わる様々な分野について、それぞれの超一流の先生方から直接教えて頂く非常に貴重な機会を得て、より深く森林について考え理解できたのではないかと思います。

大学4年生からは森林経理学研究室に所属し、「持続可能な森林経営」のキーワードの下で修了まで勉強しました。成長に時間がかかる樹木が対象であるため、当然50年先、100年先を見据えた考え方を先生、先輩方から叩き込まれました。修了後、民間企業に就職し、そのような長期的視野から物事を考えられる人は一般的には稀であるということをあらためて実感しました。ですが、環境問題を始めとする現代社会の様々な矛盾を解決するヒントが、そんな森林的な思考の中にあるのではないでしょうか?

こんな素晴らしい学科はまたとありませんので、多くの方が選択されることを卒業生の一人として期待しています。

卒業生の写真

土佐 珠江さん
デロイトトーマツコンサルティング合同会社(平成17(2005)年修了)

私は高校生の頃から免疫に興味があったものの、圧倒的に血が苦手でした。植物ならば血を見ずに病理ができる、同じ植物なら大きくて長く生きる方が複雑で良い、というシンプルな理由で森林植物学研究室に進学を目指し、森林科学専攻を選びました。

実際に森林科学専攻に進学してみると、森林科学は植物学だけでなく、動物生態学や砂防工学、経済学、政策学とカバー範囲が広く、よって出会う講師陣や学生も他の専攻と比べて非常に多様かつ強い個性の持ち主で、新鮮な刺激を受けることができました。特に、学部生の間は泊りがけの演習も多いので、他専攻よりも専攻内の関係が深まりやすく、楽しかったです。基本的に森林に携わろうと志す方は鷹揚な性格の方が多いと思います。ナラタケの病原性という修論テーマでポーランドの学会に初めて参加した際も、各国の研究者が気さくに話しかけてくれましたし、森林科学専攻は交流しやすく刺激を受けやすい環境だと思います。また、森林について学べる学部を持ち、自前の広大な演習林を複数保有している大学は日本では他にないため、学生時代にヒルと闘ったり「北の国から」の森や屋久島の奥深くに分け入ったり、という経験ができたのは稀有なことでした。おかげで卒業後に初対面の人と学生時代の話をする際、林学時代のエピソードを話せば自慢に聞こえることもなく盛り上がることができています。(社会人として他大卒の人と話す時はコレ大事)

私は修了後、専門分野と直接関係のない進路を選び、今はコンサル業界に身を置いています。常に新たなものを学んでいかなければならないコンサルタントという職業にとって学生時代に幅広い学問に触れ、雑食できる素地ができたのはプラスだったと思います。学生時代に専門性を高めることも、幅広い分野に触れて広い視座を持つことも、どちらも良い経験だと思います。大切なのは、その時々でベストを尽くし続けることだと思いますので、優秀な皆さんがベストを尽くせるような良い環境を選べることを願っています。

運輸・観光

卒業生の写真

吉田 斉正さん
JR東日本(平成13(2001)年修了)

私が森林科学を希望した理由を思い出してみると、自然科学に興味があり、実習が多く体験を通じて学ぶことが出来る点に魅力を感じたからです。実際、演習林での実習やタイの熱帯季節林での研究を通じて、森林科学の面白さ、フィールドワークの重要性を学ぶことができました。

現在、私は鉄道の安全を守る防災の仕事に携わっています。鉄道における自然災害には土砂崩壊、落石など森林地から発生するものが少なくありません。これらの災害を防ぐには日頃の検査が重要であり、学生時代に培ったフィールドワークの経験が生かされています。また、吹雪や雪崩対策として鉄道林が大きな役割を担っており、昔から鉄道の安全と森林との間には深いつながりがあるのです。そのため、砂防で学んだ知識はもちろん森林科学全般で学んだことがいま非常に役にたっているのです。

森林科学では実習で同期と寝食を共にする時間が多いのも特徴の1つです。そのため、卒業した今でも学生時代と変わらぬ交流を持ち続けられていることが、私の中で財産となっています。

卒業生の写真

安達 寛朗さん
財団法人JTB(平成13(2001)年卒業)

みなさん、こんにちは。僕が在籍した森林風致の一番の特徴は、フィールドが日々の生活そのものということだと思います。例えば、「この大きな木、なんだかいいなぁ」というほんわかした気持ちや、「俺の生活に緑はいらねぇ!」というアナーキーな感覚から学問が出発します。

ただ、一番の難関はそれらの感覚や疑問に自ら気づけるかどうかです。当然のこととして過ぎていく日常に対して常に問題意識を持つのは大変です。また、自分なりの問題意識が見つかっても、次はそれを人が納得するように客観的に組み立てねばなりません。

森林風致では、極論すればこの一連の作業しかしません。(というか、他に何も覚えてません・・・。)でも、何気ない日常に対して自分なりの問いを設定し客観的に検証する力、これは社会に対して能動的に関っていく上で、最も大切な力だと思います。これは森林風致だけでなく、森林科学全体に通じる部分でもあります。森林科学でこの力を鍛えれば、きっと社会のどんな場面でも通用しますよ!

その他

卒業生の写真

杉崎 友是さん
日本工営(平成14(2002)年修了)

現在私は、地すべりや崩壊といった土砂災害を対象とした防災にかかわる仕事に携わっております。大地に生じた微細な変状を手がかりに、甚大な被害をもたらす土砂災害のメカニズムを考察し、災害を防止する手段を検討するなかで、森林科学専攻での経験が大いに役立っています。なぜなら・・・

森林科学専攻では、数々の講義と現地実習を履修します。林内に繁茂する植物の葉っぱ1枚・渓流に堆積した石の裏で蠢く小虫の1匹といったミクロな物から、1本の木が集まって形成された森林が重要な役割を担う大気水循環・1塊の土砂の集合体として莫大なエネルギーを生じる土石流といったマスなものまでを「何でも御座れ」で学習・体験することが出来ます。これらを通して、小さな事象に気付き注視する探求心から、物事の全体を広い視野で捉える思考手法までを、バランス良く身に付けることが出来ました(言い過ぎか?)。

卒業生の写真

吉里 啓一郎さん
九州電力(平成20(2008)年修了)

熊本の豊かな森林に囲まれて育った経験や、それに対する感謝の気持ちから、森林科学に志しました。実習等で実物を見たり、現象を目の当たりにするところから学問や研究が広がっていくというスタイルが、私の気質に合っていたと思います。

森林科学を専攻したことで、森林が持つ多様な機能を知り、人が森林にどのような影響を与え、また人が森林を利用することでどのような価値を得られるかを学ぶことができました。社会に出てからも、大学で学んだことを話すと、興味深く聞いてくれる人達がたくさんいて、人に森林の尊さを伝えたり、一緒に考えたりできることは、私の喜びの一つです。

私が勤めている九州電力は、電気の安定供給を通して、九州の生活や社会に役立てるよう努力しています。一方で、エネルギー産業に携わる事業者として、地球環境問題や資源エネルギーの問題と密接に関わっており、どう対応していくかが大きな課題になっています。そのような中で、森林科学専攻で学んだ「資源の利用と環境保全の両立を目指す精神」を持って仕事に取り組むことが、林学OBとしての私の使命だと考えています。

卒業生の写真

石原 皓さん
森トラスト株式会社(令和3(2021)年修了)

文科に入学した私にとっては、他の進路も考えてみようとガイダンスを聞きに行ったことが森林科学との出会いでした。森林科学が興味深く思われたのは、これが研究の対象によって区切られた分野であり、研究の手法が非常に多岐にわたるためでもありました。自然科学だけでなく、人文社会科学の要素も含まれた領域の中では、特定の分野に優れて詳しい方もいれば、ふらふらと目につくものをつまみ食いしたい私のような者もいます。同期や先生方、先輩方後輩方とおおらかな方々に囲まれての大学生活はとても楽しいもので、思い返せば、学生実習で遅くまで宴席で語り合うような経験はとても貴重なものでした。
 
私はいま、不動産デベロッパーで働いています。長らく森林を開発予定地として捉えてきた業界ではありますが、少しずつ都市の中に「緑」や「木」を取り戻す動きが生まれつつあります。森林について学ぶことは、必ずしも森林についての知識を用いて生計をたてていくこととは直結しません。しかし、森林は物理的にも経済的にも人間の生活とは深い関係にあります。森林について学ぶことで、何か1つものの捉え方が変わるようなことがあるかもしれません。

この文章がそんな出会いの機会になれば幸いです。

卒業生の写真

泉 孝太郎さん
中部電力パワーグリッド株式会社(令和4(2022)年卒業)

文科三類に入学し「大学は4年で卒業して働こう」と考えていた私は、「社会人になって今後必要となる考え方をどこで身につけられるか」ということを進学選択において重視していました。森林科学は、自然と社会との関わり、環境と人間との関わりに目を向け、不確実性が高まりつつある世界において重要な視座を与えてくれる学問だと考え、進学を志しました。

大学4年次から始まる研究室生活は、教室で講義を聞き試験を受けていた生活とは一変します。何を研究したいのか、研究室の先生やメンバー、別の研究室の同期と話した経験は、その当時は大変でも今では貴重な思い出です。研究の中で全国各地に赴き人と出会い調査を進めた経験も学生ならではだと思います。

現在私は電力会社に勤め、鉄塔や送電線の工事等に必要な土地や権利を取得するために現場へ赴き交渉を行う業務に携わっています。研究をしていた頃の経験が役に立っていることはもちろん、森林科学が与えてくれた長期的かつ俯瞰的な視座も業務の中で意識することが増えています。現在の業務内容とかつての研究内容は必ずしも直結しませんが、森林科学から得た学びや経験は少なからず役立っていると思います。