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国際共同研究:世界の森林の文化・精神的な価値に挑む ~聖なる森から植林地へ、そしてトトロの森へ~

発表者:Jeanne-Lazya Roux (ヨーロッパ森林研究所)、香坂 玲(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 教授) 高橋 卓也(滋賀県立大学 環境科学部 環境政策・計画学科 教授) 柴田 晋吾(上智大学教授・大学院地球環境学研究科)、 等、アジア3か国(インド、イラン、日本)、ヨーロッパ10か国(オーストリア、ベルギー、チェコ共和国、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ポーランド、スペイン、スイス)計18名による共同研究

<発表のポイント>

(1) 幅が広く捉えづらい「文化的・精神的な価値」を「個人またはコミュニティーが自分たちの信念、感情、アイデンティティ、文化的伝統を森林や樹木と結びつける無形のまたは感覚を超えた経験に対し与える主観的な意味を指す」と定義し、幅広い領域に関わることを確認(図1)
(2)森林や自然に対するアプローチを4段階の時代パターンに分け、それらが文化的・精神的・宗教的にどのような相互作用をもたらしたのかを分析し、現代における生物多様性保全への貢献などを明らかにした(図2)。

<研究概要>
 古代からの聖地や森には人々が精神的な拠り所とし、環境保全や維持を行ってきた背景があり、その空間において保持されている豊かな生物多様性が注目されている。加えて森林がもたらす癒し効果は人々の精神的な豊かさをもたらすものである。世界各地に残る宗教的な価値観を持つ聖なる山や森の存在と、文化的・精神的なつながりについて法令やツーリズム、環境保全の観点を含める学術的な検討を行った。
 図2で示す通り、近年文化的・精神的な価値の重要性は低下傾向があったが、現代において復活の兆しがある。要素は8つあると考察される。[8つの要素:①生物多様性を重視した森林管理 ②枯死木をあえて残す森林の取り扱い ③森林浴などの森林療法(ヨーロッパでも拡大) ④森林管理についての先住民等の伝統的生態知識への関心の高まり ⑤宗教界の自然保護の動き ⑥森林葬・森林墓地 ⑦シンボリックな意味を込めた植樹 ⑧生物多様性保全における文化的・精神的な価値への注目] 生物多様性保全条約のもと、世界は30 by 30目標を設定し、陸地と海洋の自然を守ることに同意し、文化的・精神的な価値への着目が、自然の保全とともに、私たちの精神の健全性に貢献することが期待される。

<発表雑誌>

雑誌名
Ecology and Society
論文タイトル
Exploring evolving spiritual values of forests in Europe and Asia: a transition hypothesis toward re-spiritualizing forests
著者
Jeanne-Lazya Roux, Agata A. Konczal, Andreas Bernasconi, Shonil A. Bhagwat, Rik De Vreese, Ilaria Doimo, Valentino Marini Govigli, Jan Kašpar, Ryo Kohsaka, Davide Pettenella, Tobias Plieninger, Zahed Shakeri, Shingo Shibata, Kalliopi Stara, Takuya Takahashi, Mario Torralba, Liisa Tyrväinen, Gerhard Weiss, Georg Winkel
DOI番号
10.5751/ES-13509-270420
論文URL
https://ecologyandsociety.org/vol27/iss4/art20/

<問い合わせ先>

東京大学大学院農学生命科学研究科 森林風致計画学研究室
教授 香坂 玲(こうさか りょう)
Tel:03-5841-5218
E-mail:kohsaka.lab<アット>gmail.com  <アット>を@に変えてください。
    kohsaka<アット>hotmail.com <アット>を@に変えてください。