森林は、地球の陸地面積の約30%を占めています。また、さまざまな生物のすみかとなったり、人々のレクリエーションの場となったりするほか、雨水の貯蓄、木材の供給など、非常に多くの機能を有する生態系で、その重要性は多岐にわたります。
ところで皆さんは、東京大学の敷地面積の99%が森林ということを知っていましたか?
森林生物科学専修と森林環境資源科学専修では、この広大なフィールドを舞台に、森林を めぐって生じる自然科学系から人文社会科学系までのすべての課題を扱っています。そのため、森林生態系の物質循環・生物多様性から森林と人間・文化との関係まで幅広く学ぶことができるのです。
広大なフィールド
東京大学の演習林
東京大学には、亜寒帯から暖温帯にまたがる天然林と人工林によって構成された7カ所の演習林があり、その総面積は32,000haに及びます。演習林は森林科学の多様な研究・教育のフィールドとして重要な役割を担っています。
フィールドを使った実習
森林で行われる実習プログラムが数多くあり、その大部分は各地の演習林で実施されます。他に類を見ない、森林生物科学専修と森林環境資源科学専修の特徴の一つです。
森林をテーマにした多様な学問分野
卒業論文研究は、全18研究室のいずれかに所属して取り組みます。研究室ごとに得意とする学問分野は様々で、農学の枠を超え、理学、工学、法学、経済学、文学、教育学などの学問分野を融合させながら、複合的に森林の課題解決を目指しています。
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森林経理学研究室
持続可能な森林管理の手法を探究する
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造林学研究室
樹木の環境応答特性を調べ、世界の森づくりに活かす
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林政学研究室
「『ひと』と『もり・やま』の関係性」を探る学際的な研究
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森林生物地球科学研究室
大気-水-土と森林の関わりを地球規模で探求する
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森林利用学研究室
森林資源の持続的な利用を技術的側面から追究する
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森林植物学研究室
植物と微生物の研究から森林の健全性維持に貢献する
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森林動物学研究室
森林に生息する多様な動物の生態や進化を探求する
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森林風致計画学研究室
自然と人の空間関係を探求する
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森林圏生態学研究室
持続的森林管理を目指したミクロからマクロの生態学
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森林生物機能学研究室
樹木・微生物の機能を探求して森林の保全利用に革新を
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森林圏生態社会学研究室
森と人との関わりにあらゆる角度から迫る
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森林流域管理学研究室
森林資源、水資源、山地災害の管理手法を確立する
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樹木生理学・熱帯造林学研究室
樹木の環境ストレス耐性機構と熱帯荒廃地の環境造林
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森林共生生物学研究室
樹木と菌根菌の生理・生態学
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樹木環境生理学研究室
樹木の環境応答と荒廃地造林
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陸域保全生物学研究室
絶滅危惧植物や希少菌類の保全にむけた科学的アプローチ
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陸域生態系動態学研究室
生態系の破壊と再生を森の時間スケールで見つめる
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陸域景観情報学研究室
感性と技術で森と人を紡ぎ直す
充実の学⽣⽣活
2年生
Aセメスター
農学部に進学が内定した2年生は、農学総合科目と農学基礎科目を受けます。この学期は、農学部生になるための基礎的な知識をつける大切な期間です。
3年生
3年生になるといよいよ専門科目の授業がスタートします。午前に座学の授業を受け、午後 に実習するというのが大きな流れです。
実験室で行うものから野外で行うものまでさまざまな実習が存在します。Aセメスターから研究室に配属されますが、研究室配属にあたっては、興味がある研究室を自由に選択できます。
4年生
配属された研究室で、卒業論文の研究に取り組みます。2月に開催される発表会で卒業論文の発表をします。
卒業
大学院に進学または就職
学部卒業者・大学院修了者の主な就職先
アクセンチュア、王子ホールディングス、神奈川県、環境省、国土交通省、JTB、林野庁、住友林業、東京海上日動、東京都、日本森林技術協会、日本政策金融公庫、日本製紙、日本放送協会、東日本旅客鉄道、丸紅、三井住友銀行、三菱商事、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなど
学生の声
岡部 信(修士2年,森林共生生物学研究室)
幼い頃から自然の中で遊ぶのが好きで、将来は漠然と生物に関する研究がしたいと思っており、理科2類に入学しました。前期教養課程の全学ゼミで北海道演習林を訪れたり、東京近郊の山を登ったりするうちに森林に関わる研究がしたいと思い、森林生物科学専修に進学しました。専修では、幅広く森林について学ぶことができるため、森林について学びたいがまだ自分の興味を絞りきれていない人でも、きっと自分のやりたいことが見つかると思います。
仮屋園 純平(修士2年,森林生物地球科学研究室)
教養学部時代にたまたま林業の本に出会い、森林に興味を持ったことがきっかけで、森林環境資源科学専修へ進学しました。3年次には全国各地の演習林で現地実習があるということも進学を決意した理由の一つです。現在は森林科学専攻の大学院で研究に励んでいますが、野外観測に出かけることも多く、研究室メンバーとの強いつながりも生まれ、楽しい研究ライフを満喫しています。自然と直接触れ合いたいという人には特におすすめの専修です。
内藤 英理香(修士1年,附属演習林)
幼少期から昆虫や植物が好きだったことに加えて、山に囲まれた地元の景色に対する愛着と、森林を取り巻く現状への漠然とした危機感から、森林科学に興味を持ちました。もともとは動植物への関心が強かったのですが、実際に学んでみると、想像以上に森林生態系と人間社会が密接に関係していることがわかり、関心が文化や経済、山村社会などにも広がりました。専門を究めながら、多様な学問分野の視点も重要となる点は森林科学の面白さだと思います。
中島 大雅(学部4年,造林学研究室)
もともと山登りが好きで森林への関心があったこと、駒場で受けた「森林環境資源学」で森林科学に興味を持ったこと、昨今の気候変動や地球温暖化を考える上で森林が重要な役割を果たしていることなどから理科一類から森林環境資源科学専修に進学しました。森林科学は分野が幅広く社会科学・人文科学系から自然科学系まで扱っており、自分の興味・知的好奇心を非常に刺激してくれました。また座学だけではなく、演習林の実地で学ぶことでより深く理解することができ、良き学友や先生方にも恵まれ非常に充実した日々を送っています。
高野 瑠里花(学部4年,森林動物学研究室)
⽂科三類に⼊学したものの⽂系の学部でやりたいことが⾒つかりませんでした。そんな中ふらっと⽴ち寄った農学フェアで声をかけられたことがきっかけとなり、⽣物多様性に漠然とした興味を持っていたこともあって、森林環境資源科学専修への進学を決めました。各地にある東⼤の演習林で、他では体験できない様々な実習に参加できることが⼀番の魅⼒だと思います。また、部活に打ち込む⼈、勉強に励む⼈など、どんな⼈でも受け⼊れてサポートしてくれるので、のびのびと⽣活できています。